巨大な怪獣が街へやって来る。迎え撃つのは変身ヒーローではなく、その街を所有しているお嬢様。しかも執事が差し出す巨大化ドリンクを飲んで本人が巨大になる――。
『ジャイアントお嬢様』は、設定を説明した時点ですでにオチがついているような漫画です。それでも一発ネタで終わらないのは、「巨大なお嬢様」というアイデアを戦闘、日常、街との関係、キャラクター同士の掛け合いへ何度も違う形で転がしていくからでしょう。
そのため、次に読む漫画を「怪獣もの」だけで探すと少しずれます。巨大な女の子が街を歩くスケール感が好きなのか、機子とセバスチャンの真顔でおかしなことをする掛け合いが好きなのか、お嬢様という記号を全力で悪ふざけに使うノリが好きなのか。今回はそこを分けて、5作品を選びました。
『ジャイアントお嬢様』の魅力とは?
主人公の富士動機子は、4歳の誕生日に街を丸ごともらい、その街を大切に育ててきた財閥のお嬢様です。侵略者が現れれば、Dr.セバスチャンが用意した巨大化ドリンクで体を巨大化させ、自ら街を守る側へ回ります。
普通の巨大ヒーロー作品なら、「街を壊さないように怪獣を倒す」ことが緊張感になります。しかし機子の場合、本人が守ろうとしている街を自分の巨大な体でも壊しかねない。この矛盾が最初からギャグになっています。それでも機子の街への愛情自体は茶化されていません。街も住民も大切だから本気で戦う。ただ、その方法がとんでもなく大ざっぱなのです。
機子とセバスチャンの関係も重要です。機子が勢いよく「わたくしが何とかしますわ!」と前へ出る一方、セバスチャンは巨大化という異常な解決策を平然と提示する。主人公だけがボケ役なのではなく、周囲まで異常事態を日常として受け入れているから、毎回スケールの大きな出来事が妙に軽快に進みます。
そして「お嬢様」という属性も飾りではありません。財力、尊大な口調、妙な自信、住民への愛情。それらを怪獣映画級のサイズまで拡大することで、機子というキャラクターそのものがギャグの装置になっています。読んでいる側は「次は何を巨大化ネタにするんだ」と身構えるのですが、その予想のさらに横へ話が飛んでいく。
つまり本作の好みは、「巨大な女の子と街のサイズ差」「特撮的な怪獣アクションを笑いに変える感覚」「強烈な主人公と冷静な相棒の掛け合い」「お嬢様という様式美を本気でふざけ倒す勢い」「馬鹿馬鹿しいのにキャラクターへの愛着が残る読後感」に分けられます。以下では、そのどこをもっと読みたいかで選べる5作品を紹介します。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『まりかセヴン』
まず、巨大化して怪獣と戦う女の子という部分を最優先するなら『まりかセヴン』です。普通の女子高生・三條まりかが宇宙人セヴンと融合し、巨大ヒロイン「まりかセヴン」として怪獣退治をすることになります。
巨大ヒロイン、怪獣、宇宙人という材料だけなら王道の特撮漫画に見えますが、まりか本人は必ずしも「地球を守る英雄」らしい熱血タイプではありません。巨大な戦いが起きているのに本人や周囲の反応は妙に生活感があり、ヒーローものの約束事を少しずつずらして笑いへ変えていきます。
ここが『ジャイアントお嬢様』にかなり近いところ。機子もまりかも、巨大化した瞬間だけ立派なヒーロー人格に切り替わるわけではなく、普段の性格を引きずったまま巨大な事件へ放り込まれます。
一方、機子のような財力や「自分の街」という要素はありません。そのぶん特撮作品へのパロディや巨大ヒロインとしての日常に重点が置かれています。怪獣との戦いそのものより、「巨大ヒロインが普通の人間だったら実際どうなる?」という部分が好きな人には特に合います。全8巻で完結しているため、まとまった長さで最後まで読めるのも利点です。
2.『ちえりの恋は8メートル』
巨大な女の子と普通サイズの人間が同じ日常を送る。そのサイズ差そのものがおもしろかったなら、『ちえりの恋は8メートル』がかなり近い候補です。
普通の高校生・小滝夢路の前へ現れた幼馴染の大峰ちえりは、身長8メートルの巨大な姿になっていました。夢路は学校でちえりを支える「お手伝いさん」を任され、二人は同じ高校生活を送り始めます。
こちらには侵略者との豪快なバトルはありません。代わりに、教室へ入る、会話する、一緒に出かけるといった普通の日常が、8メートルという身長によって全部特別なイベントになります。『ジャイアントお嬢様』が巨大化を使って日常を破壊する漫画なら、こちらは巨大な体を日常の側へ何とか収めていく漫画と言えるでしょう。
そして中心にあるのは、ちえりと夢路の関係です。巨大な姿を珍しい存在として眺めるだけではなく、昔から知る相手として支える夢路がいるため、「大きい」という特徴の奥にある本人の気持ちが見えてきます。
機子が街並みとの対比で巨大さを見せる場面や、人間サイズの仲間との距離感が好きだった人には特におすすめ。全6巻で完結しており、読み終えたあとには巨大さのインパクト以上に、二人の青春を見届けた柔らかい余韻が残ります。
3.『乙女怪獣キャラメリゼ』
巨大化を「楽しい特殊能力」ではなく、本人の感情と結び付いたものとして読んでみたいなら『乙女怪獣キャラメリゼ』です。
女子高生の赤石黒絵は、体に原因不明の変化が起きる症状を抱え、人との関わりを避けて暮らしています。ところがクラスメイトの南新汰と出会い、恋心が動き始めたことで、彼女の中に眠っていた規格外の力まで表へ出てきます。
女の子の感情と巨大怪獣という、本来まったく違うスケールのものを同じ画面へ放り込むところがこの作品の面白さです。『ジャイアントお嬢様』では「巨大になった機子」が堂々と街へ立つこと自体が爽快ですが、黒絵にとって巨大化は自分の心を隠せなくなる怖さとも結び付いています。
だから似ているのに読後感はかなり違います。機子の豪快さを見たあとに読むと、同じ「巨大なヒロイン」でも、それが本人にとって誇らしい力なのか、制御できない感情なのかで物語がここまで変わるのかと分かります。
巨大化そのものへの興味に加えて、女の子の内面や恋愛までしっかり読みたい人向け。怪獣映画級のスケールと少女漫画的な感情の近さが同居する、かなり独特な作品です。

4.『ゲーミングお嬢様』
巨大化ではなく、「お嬢様が何をしても大げさで面白い」という部分に惹かれた人には『ゲーミングお嬢様』を推したいところです。
舞台は、お嬢様ゲーマーたちが集まる聖閣東芸夢学園。主人公・祥龍院隆子をはじめとする“eお嬢様”たちが、格闘ゲームへ異常な情熱を注ぎます。ゲーム用語、対戦文化、煽り合いまで、あらゆるものがお嬢様言葉と合体していきます。
『ジャイアントお嬢様』が「巨大化×お嬢様」という組み合わせを最後まで本気で押し通す漫画なら、こちらは「格闘ゲーム×お嬢様」。共通するのは、普通なら一発ネタで終わりそうな組み合わせを、世界観そのものへ拡張してしまう強引さです。
祥龍院隆子たちの戦いは、本人たちにとっては極めて真剣。だからこそ周囲から見ると余計におかしい。機子が大真面目に巨大化して街を守る姿で笑えるのと、よく似た構造です。
怪獣や巨大娘を求める人には方向が違いますが、「ですわ!」の勢い、妙に壮大な言い回し、キャラクター全員が悪ノリに参加していくテンポが好きならかなり強い候補。全7巻で完結しており、読み終えたあとには「よくこのテンションをここまで走り切ったな」という妙な爽快感があります。
5.『姫様“拷問”の時間です』
最後は巨大ヒロイン漫画ではありません。それでも『ジャイアントお嬢様』の「異常な設定を登場人物全員が当然のように受け入れている笑い」が好きなら、『姫様“拷問”の時間です』は外せません。
魔王軍に捕らえられた国王軍第三騎士団の騎士団長である姫。タイトルだけなら重い展開を想像しますが、彼女を待っている“拷問”は、食べ物や遊びなどを使って秘密をしゃべらせようとする、どこか平和なものばかりです。
本来なら深刻な「捕虜と拷問」という構図を、毎回まったく違う方向から脱力系コメディへ変えていく。この発想の転換が、『ジャイアントお嬢様』の怪獣襲来を巨大なお嬢様のドタバタへ変えてしまう感覚とよく似ています。
さらに読み進めるほど、姫と魔王軍の面々の距離が縮まり、敵味方という設定よりも「この人たちと一緒にいるのが楽しい」という関係性が前へ出てきます。機子とセバスチャンや街の住民たちの、事件が起きてもどこか安心できる空気が好きだった人に向いている部分です。
派手な巨大戦より日常ギャグ寄りですが、キャラクターを傷つけて笑うのではなく、好きになっていくほど笑えるタイプ。全19巻で完結しているので、長めのコメディをじっくり楽しみたい人にも選びやすい作品です。
まとめ
『ジャイアントお嬢様』に似た漫画を探すときは、「巨大化」という一点だけを見るより、どこで笑っていたかを思い出すと次の一冊を選びやすくなります。
巨大ヒロインが怪獣と戦う特撮的な楽しさなら『まりかセヴン』。巨大な女の子と普通サイズの人間が暮らす距離感なら『ちえりの恋は8メートル』。巨大化と女の子の感情をもっと深く結び付けた物語なら『乙女怪獣キャラメリゼ』。お嬢様という属性そのものを全力でギャグへ変える勢いなら『ゲーミングお嬢様』。突拍子もない設定を優しい日常コメディとして延々と膨らませる感覚なら『姫様“拷問”の時間です』が合います。
『ジャイアントお嬢様』のおもしろさは、大きな女の子が出てくることだけではありません。荒唐無稽な設定を登場人物が全力で信じ、その世界の中ではちゃんと筋が通っている。その真剣な馬鹿馬鹿しさに惹かれたなら、この5作品にはそれぞれ別方向の「規格外」が待っています。


