『全部救ってやる』が好きな人におすすめの漫画5選【動物保護・命・ヒューマンドラマ】

ヒューマンドラマ

『全部救ってやる』は、常喜寝太郎による「動物保護」の現場を真正面から描いたヒューマンドラマです。主人公の一人・星野スズは、東京でスタイリストを目指していたものの競争に疲れ、地元へ戻ってきます。そんな彼女が出会ったのが、個人で動物保護活動を続けている久我でした。

久我が向かったのは、劣悪な環境で猫が大量繁殖してしまった現場。そこで彼は、どれほど大変な状況でも「一匹も残さない」という覚悟で猫たちを救い出そうとします。その姿を目の当たりにしたスズは、自分のことで精一杯だった生き方を見つめ直し、少しずつ動物保護の世界へ関わるようになります。

かわいい犬や猫との触れ合いだけを描く作品ではありません。多頭飼育崩壊、動物愛護センター、保護団体、譲渡、虐待、野良猫への餌やり、ペットを取り巻くビジネスなど、「動物を救う」と言ったときに避けて通れない現実まで描かれるのが『全部救ってやる』です。

『全部救ってやる』の魅力とは?

本作の大きな魅力は、動物保護を単純な美談として描いていないことです。目の前に苦しんでいる動物がいるなら助ければいい――言葉にすると簡単ですが、一匹を保護すれば食費や医療費がかかり、新しい飼い主を探す必要もあります。次の動物を救うためには場所も人手も必要です。

久我は「全部救う」と言えるほど行動力のある人物ですが、そのやり方がいつでも完璧というわけでもありません。第3巻では、火事になった犬舎へ駆けつけた久我の前に、大手保護団体「DEFEND」が登場。代表のくるみたちによる組織的なレスキューを見たことで、久我は個人で活動することの限界を突きつけられます。

ここが『全部救ってやる』の面白いところで、「熱意がある人が正しい」という単純な構図にはなりません。個人だからできることもあれば、大きな組織だからこそ救える命もある。それぞれの方法には長所と問題があり、「正しい動物保護とは何なのか」という答えのない問いが何度も現れます。

スズの視点も重要です。最初から動物保護の知識を持っているわけではない彼女は、久我の行動を見ながら疑問を抱き、自分で動物愛護センターを見学するなど、少しずつ現場を知っていきます。読者もスズと一緒に「保護した後、その動物はどうなるのか」というところまで考えることになります。

さらに物語が進むと、善意を利用する人間の存在も描かれます。第5巻では実態の見えない悪徳保護団体「パーフェクトライフ」を巡る問題が登場。動物を助けるという言葉そのものが、ビジネスや自己利益のために利用される危険性にも踏み込んでいきます。

第6巻では、多頭飼育崩壊の現場で久我とくるみが保護業界の“レジェンド”と呼ばれる長内と遭遇します。大量の動物を救い出したからといって、それで終わりではありません。救出した先にも世話、治療、譲渡という長い道のりが続き、「救っても救っても」新しい問題が現れる現場の過酷さが描かれます。

扱う動物も犬や猫だけに限られません。学校で飼育されるウサギ、水族館で展示される生き物、引退後の馬などへ視点が広がり、「人間は動物とどう関わるべきなのか」というテーマそのものが大きくなっていきます。

そして第8巻では、野良猫への餌やりを巡る住民トラブルや、人間による虐待の痕跡が残った猫が登場します。動物だけを救って終わるのではなく、その問題を引き起こした人間や周囲の環境まで見なければ、本当の意味で解決にはならない。タイトルの「全部救ってやる」が、巻を重ねるほど重い言葉になっていきます。

『全部救ってやる』は2024年4月から「マンガワン」で連載が始まり、2026年9月現在はコミックス第8巻まで発売されています。「次にくるマンガ大賞2025」Webマンガ部門第5位や「川島・山内のマンガ沼大賞2025」第1位にも選ばれ、動物保護を題材にした作品として注目を集めています。

ここからは、『全部救ってやる』のように、犬や猫をかわいく描くだけではなく、保護、飼育、治療、しつけ、ペットビジネスなど、人間と動物が一緒に生きることの責任まで描いた漫画を中心に5作品紹介します。

おすすめの作品を詳しく紹介

1.『しっぽの声』

夏緑原作、ちくやまきよし作画、杉本彩協力による動物保護漫画です。アニマルシェルターの所長・天原士狼と獣医師・獅子神太一が、犬や猫を取り巻くさまざまな問題へ立ち向かいます。

扱われるのは、繁殖業者、生体展示販売、引き取り屋、殺処分など、ペットを「商品」として扱う世界の裏側です。かわいい子犬や子猫が店頭へ並ぶまで、そして売れ残った動物がその後どうなるのかという、普段は見えにくい部分まで描かれます。

『全部救ってやる』で、動物保護の現場だけでなく、その問題を生み出している社会やペットビジネスまで知りたいと思った人には特におすすめです。テーマの近さでは今回の5作品の中でもトップクラスで、動物好きだからこそ読むのが苦しい場面もありますが、知っておきたい現実に向き合える作品です。

2.『犬部!ボクらのしっぽ戦記』

片野ゆかのノンフィクションを原作に、高倉陽樹らが漫画化した動物保護ストーリーです。舞台は東北。行き場を失った犬たちを学生たちが自分たちで保護し、新しい飼い主へつなぐ「犬部」の活動が描かれます。

数年間で関わった犬は約100頭。学生による活動なので、お金も時間も人手も十分ではありません。それでも目の前に助けを必要としている犬がいれば放っておけず、世話や譲渡のために奔走します。

『全部救ってやる』で、久我の「一匹も残さない」という行動力や、利益にならなくても動物のために動き続ける姿が好きだった人におすすめです。理想だけでは続けられない保護活動の大変さと、それでも救えた一匹がくれる喜びの両方を味わえます。

3.『路地裏しっぽ診療所』

斉藤倫による、動物病院を舞台にした漫画です。19歳の大学生・雨野なずなは、かわいいものは好きでも動物そのものは少し苦手。ところがある夜、道路へ飛び出した捨て犬を自転車ではねてしまい、獣医・二丸先生がいる七宝動物病院と関わるようになります。

口が悪く愛想もない二丸先生ですが、動物の命に対しては真剣。なずなも動物病院でさまざまな犬や猫、人間と接するうちに、それまで知らなかった命との付き合い方を学んでいきます。

『全部救ってやる』で、何も知らなかったスズが久我との出会いをきっかけに動物の世界へ入り、自分で考えながら変わっていくところが好きだった人におすすめです。保護活動そのものだけでなく、動物を飼うことに伴う責任や医療についても考えさせられます。

4.『DOG SIGNAL』

みやうち沙矢による、ドッグトレーナーを題材にした漫画です。優柔不断な青年・佐村未祐は、元恋人から押しつけられた犬との生活に振り回されていました。そんなとき、神業ともいえる技術を持つドッグトレーナー・丹羽眞一郎と出会います。

未祐は丹羽のトレーニング教室「Proud Dog」で働くようになり、犬のしつけについて一から学んでいきます。問題行動に見えるものにも理由があり、犬だけを直せばいいのではなく、飼い主側が接し方を変えなければならないケースも描かれます。

『全部救ってやる』で、「動物だけを救えば終わりではなく、人間側が変わる必要がある」という部分が印象に残った人におすすめです。捨てられる犬を減らすためには、そもそも人間と犬が正しく暮らせる環境を作ることが重要だと感じられる作品です。

5.『獣医ドリトル』

夏緑原作、ちくやまきよし作画による獣医漫画です。主人公・鳥取健一は「獣医はビジネスだ」と言い切り、高額な治療費を請求することから“悪徳獣医”と呼ばれています。しかし実際には、動物の状態を見抜く確かな技術を持つ凄腕の獣医です。

ドリトルが向き合うのは、病気やケガをした動物だけではありません。飼い主の知識不足や無責任な飼育が原因となっている場合には、人間側にも容赦なく問題を突きつけます。「ペットの問題は飼い主の問題でもある」という視点が一貫しています。

『全部救ってやる』で、久我の厳しい言葉や、「かわいそうと思うだけでは動物を救えない」という現実的な姿勢が好きだった人におすすめです。犬や猫だけでなく、馬や動物園の動物など幅広い命を扱いながら、人間と動物の関係そのものを問い直していきます。

まとめ

『全部救ってやる』は、常喜寝太郎による動物保護ヒューマンドラマです。東京から地元へ戻った星野スズが、どんな過酷な現場でも動物を見捨てない保護活動家・久我と出会ったことで、これまで知らなかった「命を救う仕事」の世界へ踏み込んでいきます。

ペット流通や保護業界の問題まで深く知りたいなら『しっぽの声』、保護活動そのものに奔走する人々なら『犬部!ボクらのしっぽ戦記』がおすすめです。動物病院と命の責任なら『路地裏しっぽ診療所』、犬と人が正しく暮らす方法なら『DOG SIGNAL』、動物だけでなく飼い主まで向き合う獣医漫画なら『獣医ドリトル』も相性抜群です。

すべての命を救うことは現実には難しい。それでも、救えない命があるからといって目の前の一匹を諦める理由にはならない。『全部救ってやる』の久我やスズたちが、理想だけでは済まない現実と向き合いながら動き続ける姿に心を動かされた人なら、今回紹介した5作品にも「人間は動物のために何ができるのか」を考えさせられる物語が待っています。

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