『柊様は自分を探している。』は、西森博之によるミステリアスな学園ファンタジーです。主人公の一人・白馬圭二郎は、高校生とは思えないほど落ち着いた雰囲気を持つ少年。そんな圭二郎がある日出会ったのが、倒れた不良たちのそばに涼しい顔で立っていた謎の美少女・柊です。
柊が覚えているのは、自分の名前が「柊」であるということだけ。それ以外の過去についてはまったく記憶がありません。しかも現代社会の常識をほとんど知らず、昔風の言葉遣いをしながら、普通の少女では考えられないほどの身体能力まで持っています。
そんな柊から突然「家来」に指名されてしまった圭二郎は、彼女を自宅で預かることに。最初は正体不明の美少女との奇妙な同居生活として始まりますが、柊の記憶を探るほど、人間ではない存在や過去の因縁まで絡んだ大きな謎へつながっていきます。
『柊様は自分を探している。』の魅力とは?
本作でまず魅力的なのが、柊というヒロインです。誰が見ても目を奪われる美少女でありながら、一人称は「儂」。周囲を当然のように自分の家来扱いし、どこか姫君のような態度で振る舞います。
その一方で、現代の生活について知らないことも多く、水道や病院など当たり前のものにも戸惑います。圧倒的に強くて堂々としているのに、知らないことを前にすると妙に無防備。このギャップによって、謎だらけの人物なのに自然と親しみを感じられます。
しかも柊は、ただ天然なだけではありません。必要な場面では相手の性格を読み、少し計算高い行動を取ることもあります。美しく、強く、偉そうで、ときには腹黒い。それでも人への思いやりも持っているという、西森博之らしい一筋縄ではいかないキャラクターです。
圭二郎との関係も見どころです。突然家来にされてしまった圭二郎ですが、柊にただ振り回されるだけではありません。自身も武道を身につけており、危険な出来事が起きれば柊とともに行動します。
物語序盤では、柊が学校へ通い始めたことで学園コメディ色も強くなります。その美貌に男子生徒が振り回され、女子から警戒される一方で、本人は周囲の反応などほとんど気にしません。謎を追う物語でありながら、日常パートには西森作品らしい軽快な笑いがあります。
しかし、圭二郎の師匠・飛騨は柊の存在を警戒します。柊は本当に人間なのか。彼女の常識外れの身体能力はどこから来たのか。そして失われた記憶には何が隠されているのか。楽しい学園生活の裏で、少しずつ不穏な要素が積み重なっていきます。
物語後半では、人外の存在である天狗や「久遠夜叉」などが登場し、柊の過去を巡るファンタジー色が一気に強くなります。序盤の「正体不明の美少女との同居」という小さな謎が、やがて人ならざる者たちの因縁へ広がっていく構成も本作の面白さです。
それでも作品の中心にあるのは、柊と圭二郎たちの関係です。柊が自分の正体を知ったとき、今まで一緒に暮らしてきた人たちとの時間をどう受け止めるのか。「自分が何者なのか」というタイトル通りの問いが、最後まで物語を引っ張ります。
『柊様は自分を探している。』は『週刊少年サンデー』で2016年から2018年まで連載され、コミックス全8巻で完結しています。西森博之らしいキャラクター同士の会話とコメディを楽しみながら、怪異ミステリーやバトルまで味わえる作品です。
ここからは、『柊様は自分を探している。』のように、強くて謎めいたヒロイン、現代の日常に入り込む怪異、失われた過去や正体を巡るミステリー、そして笑いとバトルを一緒に楽しめる漫画を中心に5作品紹介します。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『天使な小生意気』
『柊様は自分を探している。』と同じ西森博之による学園ラブコメディです。主人公・天使恵は絶世の美少女でありながら、自分はかつて男だったと信じ、「男の中の男」へ戻る方法を探しています。
美少女なのに非常に喧嘩が強く、性格まで誰よりも男前。そんな恵の周囲に蘇我源造をはじめとする個性的な人物が集まり、恋愛、友情、喧嘩、ギャグが次々と展開されます。
『柊様は自分を探している。』で、強くて美しいのにどこか普通ではない柊や、「自分は何者なのか」という謎が好きだった人には特におすすめです。同じ作者らしいテンポのいい会話や、クセの強い人物たちもたっぷり楽しめます。

2.『道士郎でござる』
こちらも西森博之による学園コメディです。アメリカ・ネバダ州で育った高校生・桐柳道士郎は、なぜか完全な武士となって日本へ帰国します。
昔風の言葉遣いで武士道を信じ、現代社会の常識とはかなりズレた道士郎。普通の高校生・小坂健助を勝手に「殿」と決め、主君として仕え始めたことで学校中を巻き込む騒動が起こります。
『柊様は自分を探している。』で、昔風の口調と価値観を持つ柊が現代の学校へ入り込むギャップが好きだった人にはかなり相性があります。圧倒的に強い変人が大真面目に行動することで笑いが生まれるところも共通しています。

3.『MAO』
高橋留美子による怪異ファンタジーです。中学生の黄葉菜花は、幼いころに事故へ遭った過去を持つ少女。ある日、かつて事故が起きた場所へ向かったことで、不思議な世界へ迷い込み、陰陽師の青年・摩緒と出会います。
菜花自身にも普通の人間では説明できない秘密があり、摩緒もまた長い年月にわたる過去と因縁を抱えています。二人はさまざまな怪異と戦いながら、自分たちの過去へつながる謎を追っていきます。
『柊様は自分を探している。』で、主人公自身の正体が大きな謎になっているところや、学校生活から人外の存在を巡る物語へ広がっていく展開が好きだった人におすすめです。過去の因縁が少しずつ判明していくミステリーも楽しめます。

4.『ダンダダン』
龍幸伸によるオカルト青春バトル漫画です。幽霊を信じる綾瀬桃と、宇宙人を信じるオカルンこと高倉健が、それぞれ相手の主張を否定するため心霊スポットとUFOスポットへ向かったところ、本物の怪異に遭遇します。
そこから二人は、妖怪、宇宙人、超能力など常識では説明できない事件へ次々と巻き込まれていきます。怪異との本格的なバトルがある一方で、学校生活や恋愛、くだらないギャグも大量に登場します。
『柊様は自分を探している。』で、普通の高校生活と人ならざる存在が自然に混ざり合い、笑っていたと思ったら突然シリアスな戦いが始まるところが好きだった人におすすめです。

5.『ババンババンバンバンパイア』
奥嶋ひろまさによる、銭湯を舞台にした吸血鬼コメディです。老舗銭湯で住み込みのアルバイトとして働く森蘭丸の正体は、450歳の吸血鬼。彼には、銭湯の一人息子・李仁の血が18歳になったときに飲みたいという壮大な目的があります。
ところが李仁に恋の予感が訪れたことで、蘭丸は彼の純潔を守ろうと大暴走。吸血鬼という人外設定がありながら、物語の中心は学園生活や恋愛、勘違いから生まれる強烈なコメディです。
『柊様は自分を探している。』で、人外の存在が普通の人間社会に溶け込み、そのズレから笑いが生まれるところが好きだった人におすすめです。ファンタジー設定を使いながら、キャラクター同士の関係を楽しむ作品として相性があります。

まとめ
『柊様は自分を探している。』は、西森博之による学園ミステリー・ファンタジーです。白馬圭二郎が出会ったのは、自分が「柊」であること以外の記憶を失った謎の美少女。常識外れの強さと昔風の言葉遣いを持つ柊を家で預かったことから、学園生活と彼女の正体を巡る不思議な物語が始まります。
同じ西森博之作品で強く謎めいた美少女を楽しむなら『天使な小生意気』、昔風の価値観を持つ強者と現代社会のギャップなら『道士郎でござる』がおすすめです。自分自身の正体と怪異の謎なら『MAO』、学園とオカルトバトルなら『ダンダダン』、人外と日常コメディなら『ババンババンバンバンパイア』も相性抜群です。
何者なのか分からなくても、一緒に過ごした時間まで偽物になるわけではありません。柊の失われた記憶を追うほど物語は大きな謎へ近づいていきますが、それと同時に圭二郎たちとの日常もかけがえのないものになっていきます。『柊様は自分を探している。』の笑えて少し不思議で、最後には人とのつながりが残る物語に惹かれた人なら、今回紹介した5作品にも夢中になれるはずです。

