『RIOT』は、塚田ゆうたによる「雑誌作り」を題材にした文化系青春漫画です。舞台は、海が見える穏やかな田舎町。近所には本屋もレコード屋もないけれど、スマホを使えば大抵のものは手に入る。そんな令和の町で暮らす高校生・シャンハイとアイジが主人公です。
クラスの中心にいるわけでもなく、夢中になれるものがはっきり決まっているわけでもない二人。しかし古い雑誌や紙の印刷物に触れたことをきっかけに、「自分たちでも雑誌みたいなものを作れるんじゃないか」と思い立ちます。
二人は「ZINE」という自主出版文化の存在すら知らないまま、文章を書き、写真を集め、レイアウトを考え、紙を切り貼りして自分たちだけの雑誌を制作。何となく始めた遊びだったはずが、一冊完成させたことで「次はもっと面白いものを作りたい」という欲が生まれていきます。
何者でもない高校生が、「これが好き」という気持ちだけを頼りに自分たちの表現を始める。大きな大会も世界を救う使命もないのに、雑誌一冊を作ることが冒険のように見えてくるのが『RIOT』の魅力です。
『RIOT』の魅力とは?
『RIOT』で特に面白いのは、「創作を始める瞬間」がとてもリアルに描かれていることです。シャンハイとアイジは、最初から編集やデザインの技術を持っているわけではありません。そもそも自分たちがやろうとしていることに「ZINE」という名前があることさえ後から知ります。
だから、まずは見よう見まねです。好きな雑誌を眺め、「こういう文字がかっこいい」「ここに写真を置いたら雑誌っぽい」と試しながら作っていく。プロではないからこその自由さと、初めて何かを形にする興奮がそのまま伝わってきます。
しかし一冊完成させれば、それで満足とはなりません。作れば作るほど、自分たちの雑誌に足りないものが見えてきます。写真をもっと良くしたい、内容を充実させたい、紙にもこだわりたい。創作を始める前には存在しなかった悩みが次々と生まれ、それがまた次の一冊を作る理由になります。
第2集では、雑誌をさらに面白くするため、写真が得意な同級生・ケイコを仲間に誘おうとします。二人だけで始めた活動に新しい人が加わることで、「自分たちが楽しいだけでいいのか」「誰かと一緒に作るとはどういうことなのか」という問題も出てきます。
創作は自分一人なら好き勝手できます。しかし誰かと作れば、相手には相手の考えがあります。自分の好きなものを押しつけるだけでは続かない。『RIOT』では、雑誌作りを通して高校生たちが人との関わり方まで学んでいきます。
また、舞台となる田舎町も本作では重要な存在です。シャンハイたちは当初、自分たちの町を「何もない場所」のように感じています。しかし雑誌第3号のテーマとして「生まれ育った町」を取り上げることになり、カメラや取材という視点を通すことで、いつも見ていた風景が少し違って見え始めます。
町の人に話を聞く。普段なら通り過ぎる景色を写真に撮る。自分たちが面白いと思ったものをページにする。雑誌を作ることで、何もないと思っていた故郷の中から「自分たちだけが見つけたもの」が増えていく過程がとても気持ちいい作品です。
さらに、紙の種類を調べたり、限られた小遣いの中で印刷所を使うことを考えたりと、創作が少しずつ本格的になっていくのも見どころです。パソコンやスマホだけで完結するのではなく、最終的には手で触れる「一冊」が残る。そのアナログな手触りが、デジタルが当たり前の令和を舞台にしているからこそ新鮮に映ります。
『RIOT』は2024年5月から『月刊!スピリッツ』で連載されている塚田ゆうたの初連載作品。2026年4月にはコミックス第4集が発売され、「マンガ大賞2026」では第9位に選ばれるなど注目を集めています。
ここからは、『RIOT』のように、何者でもない若者が「作ってみたい」という衝動から創作を始める物語、仲間と試行錯誤しながら作品を完成させる青春、そして好きなものによって世界の見え方が変わっていく漫画を中心に5作品紹介します。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『これ描いて死ね』
とよ田みのるによる、漫画を作る高校生たちを描いた青春漫画です。漫画を読むことが大好きな高校生・安海相は、ある出来事をきっかけに、自分自身でも漫画を描くことになります。
最初から上手な漫画が作れるわけではありません。物語を考え、絵を描き、ページにまとめ、誰かに読んでもらう。漫画を「読む側」だった少女が「作る側」へ移ったことで、それまでとはまったく違う世界が見えてきます。
『RIOT』で、シャンハイとアイジが知識も経験もないまま雑誌作りを始めるワクワク感が好きだった人には特におすすめです。「うまく作れるか」より先に「作ってみたい」がある、創作の原点を味わえます。

2.『映像研には手を出すな!』
大童澄瞳による、女子高校生たちがアニメーション制作へ挑む漫画です。設定を考えることが大好きな浅草みどり、アニメーター志望の水崎ツバメ、そして予算や交渉を担当する金森さやかが集まり、映像研で作品を作り始めます。
頭の中では最高の作品が完成していても、現実には時間、お金、技術、人手という壁があります。理想をどこまで形にできるのか、三人は何度も工夫しながら一本の映像を完成させていきます。
『RIOT』で、紙選びや印刷費、仲間集めなど「作るための現実的な問題」まで面白く感じた人におすすめです。アイデアだけでは終わらず、実際に完成させるところまで含めて創作なのだという熱さがあります。
3.『ブルーピリオド』
山口つばさによる、美術の世界へ飛び込んだ高校生・矢口八虎を描く青春漫画です。成績も良く友人関係にも恵まれていた八虎は、ある一枚の絵に心を動かされたことで、それまで縁のなかった美術へ本気で向き合い始めます。
絵を描くことで、今まで何気なく見ていた景色や色、人間の表情まで違って見えるようになる。好きなものを見つけたことで、世界そのものの解像度が変わっていく過程が丁寧に描かれています。
『RIOT』で、シャンハイたちが雑誌の題材を探すようになったことで「何もない町」に面白いものを発見していく部分が好きだった人におすすめです。創作によって日常の見え方が変わる喜びを強く感じられます。

4.『アオイホノオ』
島本和彦による、1980年代初頭の大阪を舞台にした創作青春コメディです。漫画家を目指す芸大生・焔モユルは、自分には才能があると思いながらも、周囲のクリエイターたちから強烈な刺激を受けます。
「自分も何かを作りたい」という気持ちは強いのに、実際に作品を完成させるのは大変。さらに他人のすごい作品を見れば、自分の未熟さまで見えてしまいます。創作者ならではの自信と劣等感が、勢いのあるコメディとして描かれます。
『RIOT』で、誰かの雑誌や写真を見て「自分たちももっと面白いものを作りたい」と刺激を受ける高校生たちが好きだった人におすすめです。カルチャーに夢中な若者たちの熱量を存分に楽しめます。

5.『海が走るエンドロール』
たらちねジョンによる、映画制作を題材にした人間ドラマです。夫を亡くした65歳の茅野うみ子は、映像を学ぶ大学生・海と出会ったことで、自分が映画を「観る人」ではなく「撮りたい人」だったことに気づきます。
年齢も経験も関係なく、「自分でも作ってみたい」と思った瞬間から新しい世界へ踏み出していく物語です。撮影や編集を学びながら、自分が本当に表現したいものを探していきます。
『RIOT』で、ZINEという言葉すら知らなかったシャンハイとアイジが、自分たちなりの方法で雑誌作りへ飛び込む姿が好きだった人におすすめです。「作りたいと思ったなら、今から始めてもいい」という創作の楽しさを感じられます。

まとめ
『RIOT』は、塚田ゆうたによる文化系青春漫画です。本屋もレコード屋もない海辺の田舎町で暮らす高校生・シャンハイとアイジが、紙の雑誌に惹かれ、「だったら自分たちで作ってみよう」と見よう見まねでZINE制作を始めます。
高校生が初めて創作する楽しさなら『これ描いて死ね』、仲間と試行錯誤しながら作品を完成させるなら『映像研には手を出すな!』がおすすめです。創作によって世界の見え方が変わる『ブルーピリオド』、カルチャーに夢中な若者の熱気なら『アオイホノオ』、何歳からでも「作る側」へ踏み出せる『海が走るエンドロール』も相性のいい作品です。
特別な才能があるから始めるのではなく、面白そうだからやってみる。最初の一冊を作ったことで、次にやりたいことが生まれ、仲間が増え、何もないと思っていた町まで違って見えてくる。『RIOT』のそんな「静かな革命」にワクワクした人なら、今回紹介した5作品にも何かを作り始めたくなるような創作の熱が待っています。

