『焼いてるふたり』は、ハナツカシオリによる新婚グルメ漫画です。主人公は、趣味のバーベキューにはとことん熱い会社員・福山健太と、クールに見られがちだけれど実は食べることが大好きな山口千尋。二人はマッチングアプリをきっかけに出会います。
どちらも恋愛にはかなり奥手で、なかなか最初の一歩を踏み出せません。ところが健太の浜松への転勤が決まったことで関係が一気に進み、なんと交際0日のまま結婚することになります。
お互いのことをまだほとんど知らない新婚夫婦。そんな二人の距離を縮めていくのが、健太の大好きなBBQです。肉を焼き、料理を作り、一緒に食卓を囲む。毎週末の「おいしい時間」を積み重ねながら、本当の夫婦になっていく物語です。
『焼いてるふたり』の魅力とは?
本作の大きな魅力は、「結婚してから恋が始まる」という関係です。一般的なラブコメでは、二人が付き合うまで、あるいは結婚するまでが大きなゴールになります。しかし『焼いてるふたり』では、物語のスタート地点ですでに夫婦になっています。
とはいえ、交際期間はゼロ。好きな気持ちはあっても、相手の性格や生活習慣について知らないことばかりです。何を言えば喜ぶのか、どこまで甘えていいのか、相手は自分との生活をどう感じているのか。夫婦なのに初々しさが残っている二人の距離感が何ともかわいらしい作品です。
そんな二人をつなぐのが料理です。作品タイトルの通り、序盤では庭でのBBQが大きな柱になっています。スペアリブ、肉料理、魚介、燻製など、屋外だからこそ楽しめる料理が次々と登場します。
ただ「おいしそうな料理を紹介する」だけではありません。健太が千尋に喜んでもらおうと準備したり、千尋が料理を通して健太の新しい一面を知ったりと、一つ一つの食事が夫婦の関係につながっています。
物語が進むとBBQだけではなく、家庭料理、キャンプ飯、季節の料理、外食など食の幅もどんどん広がります。バックリブやパエリアを楽しむキャンプ、ブリ大根、牛丼、ブルスケッタ、スパイスカレー、ひつまぶし、チョコフォンデュなど、「これ作ってみたい」と思える料理が豊富です。
また、健太と千尋がずっと同じ関係のままではないところも魅力です。夫婦として暮らす時間が長くなれば、仕事、友人、将来、住まいなど新しい問題も出てきます。最初は相手に遠慮していた二人が、少しずつ本音を話せるようになっていきます。
特にいいのが、お互いを理想化しすぎていないことです。一緒に暮らせば、長所だけでなく短所や失敗も見えてきます。それでも相手を知るほど好きになる。「完璧だから愛する」のではなく、知らなかった部分も含めて夫婦になっていく姿が温かく描かれています。
二人の周囲にいる人物たちの物語も少しずつ広がります。友人や職場の人々にも恋愛や仕事、将来についてそれぞれの悩みがあり、健太と千尋だけの新婚漫画から、さまざまな人の生活を描く群像劇としても楽しめるようになります。
さらに舞台となる浜松の空気も本作の魅力です。浜松餃子やうなぎをはじめとした地域の食や、ドライブ、キャンプなど地方暮らしならではの楽しさが作品に自然に溶け込んでいます。
『焼いてるふたり』は2020年9月から『モーニング』で連載中。2026年9月現在はコミックス第24巻まで発売され、第25巻は2026年9月18日に発売予定です。2024年には黒羽麻璃央と松村沙友理主演で『焼いてるふたり〜交際0日 結婚から恋をはじめよう〜』として実写ドラマ化されました。
ここからは、『焼いてるふたり』のように、おいしい料理を通して人との距離が縮まっていく物語、夫婦やカップルの日常、家で一緒にご飯を食べる幸せを楽しめる漫画を中心に5作品紹介します。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『きのう何食べた?』
よしながふみによる料理と日常を描いた漫画です。弁護士の筧史朗と美容師の矢吹賢二という男性カップルの生活を中心に、毎日の食卓や仕事、人間関係が描かれます。
史朗は食費をきっちり管理しながら献立を考え、スーパーの特売品を組み合わせておいしい料理を作ります。豪華なごちそうだけではなく、「今日の夕飯をどうしよう」という生活に密着した料理が多いのも魅力です。
『焼いてるふたり』で、料理を食べる時間そのものが二人の関係を作っていくところが好きだった人には特におすすめです。長く一緒に暮らすからこそ生まれる小さなすれ違いや、何でもない食卓の幸せをじっくり味わえます。

2.『ふたりソロキャンプ』
出端祐大によるキャンプ漫画です。一人で自然を楽しむソロキャンプを愛する樹乃倉厳は、キャンプ場で初心者の草野雫と出会います。ひょんなことから、二人でそれぞれソロキャンプをする「ふたりソロキャンプ」を始めることになります。
テントや焚き火など本格的なキャンプ知識はもちろん、アウトドアで食べる料理も大きな魅力。自然の中で作る料理のおいしさや、火を囲みながらゆっくり距離を縮めていく二人が描かれます。
『焼いてるふたり』で、BBQやキャンプ、屋外で一緒に料理する楽しさが好きだった人には相性抜群です。食事だけでなく、アウトドアを共通の趣味として男女の関係が少しずつ変化していくところも楽しめます。
3.『パンが焦げてもふたりなら』
たなによる夫婦の日常と食卓を描いた漫画です。気づかい屋のはーさんと、楽天家のひーさん。性格の違う二人が、台所を中心に毎日の暮らしを重ねていきます。
料理が完璧にできなくても、予定通りにいかなくても、二人ならそれも一つの思い出になる。タイトルにもなっている「パンが焦げてもふたりなら」という空気が、作品全体に流れています。
『焼いてるふたり』で、派手な恋愛イベントよりも、一緒に料理して食べることや夫婦の何気ない会話が好きだった人におすすめです。相手との違いを楽しみながら暮らしていく、穏やかな夫婦漫画としてよく似た心地よさがあります。

4.『作りたい女と食べたい女』
ゆざきさかおみによる料理と人間関係を描いた漫画です。料理を作ることが大好きな野本さんは、本当は大量の料理を作ってみたいものの、一人では食べきれないという悩みを抱えています。
そんなとき出会ったのが、同じマンションに住む春日さん。豪快に料理を食べる彼女へ野本さんが料理を振る舞うようになり、二人は食卓を囲みながら少しずつ特別な関係になっていきます。
『焼いてるふたり』で、「おいしいものを相手に食べてもらいたい」という健太の喜びや、料理がコミュニケーションそのものになっているところが好きだった人におすすめです。一緒に食べることでしか生まれない親密さが丁寧に描かれています。

5.『いぶり暮らし』
大島千春による燻製グルメ漫画です。同棲生活を送る頼子と巡は、休日が重なる日曜日になると、自宅でさまざまな食材を燻製にして楽しみます。
定番の肉やチーズだけでなく、さまざまな食材を「これを燻製にしたらどうなるだろう」と試していくのが大きな楽しみ。手間をかけて料理を完成させ、一緒に食べる時間そのものが二人の休日になっています。
『焼いてるふたり』で、火を使って料理するワクワク感や、二人だけの休日に食事を楽しむ生活へ憧れた人におすすめです。BBQと燻製という違いはありますが、「共通の食の趣味が二人の時間を豊かにする」という部分でかなり近い魅力があります。

まとめ
『焼いてるふたり』は、ハナツカシオリによる新婚グルメ漫画です。マッチングアプリで出会った福山健太と山口千尋が、浜松への転勤をきっかけに交際0日で結婚。毎週末のBBQやさまざまな料理を楽しみながら、お互いを知り、本当の夫婦になっていきます。
夫婦の日常と毎日の料理なら『きのう何食べた?』、アウトドアと恋愛なら『ふたりソロキャンプ』がおすすめです。穏やかな夫婦の食卓なら『パンが焦げてもふたりなら』、料理を通して近づく二人なら『作りたい女と食べたい女』、休日に二人で火と食材を楽しむ生活なら『いぶり暮らし』も相性抜群です。
豪華な場所へ出かけなくても、庭で肉を焼き、好きな人と一緒に食べるだけで最高の一日になる。『焼いてるふたり』の魅力は、そんな小さな幸せを毎週少しずつ積み重ねていくところにあります。健太と千尋の「おいしい」がそのまま夫婦の思い出になっていく新婚生活に惹かれた人なら、今回紹介した5作品にも一緒に食卓を囲みたくなるような物語が待っています。

