『ひかりのまち』が好きな人におすすめの漫画5選【群像劇・青春・人間ドラマ】

ヒューマンドラマ

『ひかりのまち』は、浅野いにおによる全1巻の連作短編漫画です。舞台となるのは、東京郊外の丘陵地に開発された巨大な新興住宅地、通称「ひかりのまち」。一見すると明るく整えられた街で暮らすさまざまな人々を主人公にしながら、それぞれが抱える孤独や傷、生と死を描いていきます。

物語は一人の主人公を追い続けるのではなく、エピソードごとに異なる人物へ視点を移していきます。しかし、それぞれが完全に独立した短編というわけではありません。ある物語で脇役だった人物が別の物語では中心になり、登場人物同士の意外な関係が少しずつ見えてきます。

自殺を目撃するカップル、自殺の「見届け屋」をしている小学生、バス停で時間を過ごす少女、不思議な言動をする女子高校生、犯罪に手を染めながら暮らす男たち。まったく違う人生を送っているように見えた人々が、同じ街の中で静かにつながっていく群像劇です。

『ひかりのまち』の魅力とは?

大きな魅力は、タイトルから想像する明るい街のイメージと、そこで描かれる人間たちの生活とのギャップです。「ひかりのまち」という希望に満ちた名前を持つ新興住宅地ですが、そこに暮らす人々の人生が必ずしも明るいわけではありません。

住宅や道路が整備され、外から見れば何の問題もなさそうな街。その一つひとつの部屋を覗けば、誰かが孤独を抱え、誰かが傷つき、誰かが生きることそのものについて悩んでいます。整然とした郊外の風景と人間の内側にある混沌が並べて描かれることで、独特の寂しさが生まれています。

また、本作では「死」が何度も物語の近くに現れます。たとえば小学生の長谷川助は、学校を休み、自殺しようとする人間の最期を見届けることで金を稼いでいます。幼い子どもが死を日常の一部のように眺めているという異様な設定ですが、物語は単純なショック描写だけにはしません。

死にたい人間がいる一方で、傷つきながら生きている人間もいる。そして、新しい命が生まれようとしている場所もある。生と死が同じ街の中で何度もすれ違うことで、「人はなぜ生き続けるのか」という問いが作品全体に漂っています。

連作短編という構成も非常に効果的です。最初は無関係に見えた人物が別の話で再登場した瞬間、それまで読んできた出来事の見え方が少し変わります。主人公だけを中心に世界が動いているのではなく、誰もが自分自身の物語を生きていることが伝わってきます。

浅野いにお作品らしい、日常の中に突然入り込む暴力や不穏さも印象的です。それでも完全な絶望だけを描いているわけではありません。どうしようもない人生の中にも誰かとの小さなつながりがあり、それによってほんの少しだけ景色が変わる。その危うい希望まで含めて『ひかりのまち』の魅力になっています。

ここからは、『ひかりのまち』のように、一つの場所で交差する人々の人生や、青春の暗い部分、孤独、生と死を描いた漫画を中心に5作品紹介します。

おすすめの作品を詳しく紹介

1.『素晴らしい世界』

浅野いにおによる連作短編漫画で、『ひかりのまち』と非常に近い読み味を持つ作品です。若者たちの日常を中心に、夢や仕事、恋愛、人間関係など、思い通りにはいかない人生が描かれていきます。

それぞれの物語は独立しているようでいて、人物や場所を通して緩やかにつながっています。ある人物にとっては一瞬の出来事でも、別の人物から見れば人生を左右する出来事かもしれない。そんな視点の変化が群像劇としての面白さを生み出しています。

『ひかりのまち』で、複数の登場人物の人生が少しずつ交差していく構成が好きだった人には最初におすすめしたい作品です。同じ浅野いにおによる連作短編なので、日常の中にある寂しさや小さな希望という部分でも非常に相性があります。

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2.『虹ヶ原ホログラフ』

同じく浅野いにおによる全1巻の長編漫画です。「虹ヶ原」と呼ばれる土地を舞台に、小学校時代の出来事と成長した登場人物たちの現在を行き来しながら、過去に起きた出来事と消えない傷を描いていきます。

時間軸が複雑に交差し、最初は関係が分からなかった人物や出来事が徐々につながっていきます。過去に誰かを傷つけたことや、見て見ぬふりをしたことが、年月を経ても人間の中に残り続けているところが印象的です。

『ひかりのまち』で、一つの土地そのものが物語をつなぎ、そこで暮らす人々の過去や現在が交差していく構成に惹かれた人におすすめです。より暗く、謎めいた浅野いにお作品を読みたい人にも向いています。

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3.『リバーズ・エッジ』

岡崎京子による、高校生たちの日常と、そのすぐそばに存在する暴力や死を描いた青春漫画です。学校へ通い、恋愛をし、友人と話すという普通の生活の裏側で、登場人物たちはそれぞれ他人には簡単に言えない秘密を抱えています。

深刻な出来事が起きても、世界そのものは何事もなかったように続いていく。その乾いた感覚が本作の特徴です。誰か一人だけが特別に壊れているのではなく、それぞれが弱さや残酷さ、孤独を持っています。

『ひかりのまち』で、平穏に見える街の日常と、その裏側にある死や暴力との距離の近さが印象に残った人におすすめです。普通の風景が少しだけ違って見えてくるような読後感にも共通するものがあります。

4.『ヒミズ』

古谷実による、普通の人生を送りたいと願う中学生・住田祐一を主人公にした青春漫画です。住田が求めているのは特別な成功ではなく、ごく平凡に生きること。しかし家庭環境や周囲の人々によって、その願いさえ次第に難しくなっていきます。

大人が子どもを守ってくれるとは限らず、普通に生きたいという願いさえ簡単には叶わない。それでも登場人物たちは、それぞれの方法で生きる理由を探そうとします。

『ひかりのまち』で、生きることと死ぬことが非常に近い場所にありながら、それでも日常が続いていくところに惹かれた人におすすめです。青春を美化せず、若者が抱える孤独や絶望を真正面から描いています。

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5.『ソラニン』

浅野いにおによる、大学卒業後の生活に迷う若者たちを描いた青春漫画です。会社員として働きながら今の生活に違和感を抱える芽衣子と、音楽への夢を完全には捨てきれない種田を中心に、若者たちが将来と向き合っていきます。

大きな夢を追うことにも、現実を受け入れて生きることにも、それぞれ怖さがあります。「このままでいいのか」と考えながら時間だけが進んでいく感覚は、多くの人が経験するものかもしれません。

『ひかりのまち』で、どうしようもない出来事を抱えながらも、その後の日常を生きていかなければならない人々の姿が好きだった人におすすめです。より青春と喪失に焦点を当てた作品ですが、悲しさの中にわずかな希望を残すところには共通した魅力があります。

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まとめ

『ひかりのまち』は、浅野いにおが東京郊外の巨大な新興住宅地を舞台に、そこで暮らす人々の人生を描いた全1巻の連作短編漫画です。物語ごとに主人公を変えながら、それまで別々に見えていた人物たちが少しずつつながり、一つの街の姿が浮かび上がっていきます。

同じ浅野いにおによる連作短編を読みたいなら『素晴らしい世界』、一つの土地と複数の時間を結びつける濃密な物語なら『虹ヶ原ホログラフ』がおすすめです。日常のすぐ隣にある暴力や死なら『リバーズ・エッジ』、生と死の間でもがく若者なら『ヒミズ』、喪失のあとも続いていく人生なら『ソラニン』も相性のいい作品です。

同じマンション、同じ道路、同じバス停を使っていても、そこで暮らしている人が何を抱えているのかは分かりません。誰かにとって何でもない場所が、別の誰かにとっては人生を変えた場所かもしれない。『ひかりのまち』で、そんな街と人間が静かにつながっていく群像劇に惹かれた人なら、今回紹介した5作品もぜひ読んでみてください。

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