『ひきだしにテラリウム』は、『ダンジョン飯』でも知られる九井諒子先生による短編集です。ひとつひとつはコンパクトな物語でありながら、ページをめくるたびにまったく違う世界へ連れていってくれるような、アイデアの密度が魅力です。
SF、ファンタジー、日常、寓話、ブラックユーモアなど、扱われる題材はさまざま。それでも全体には独特の統一感があり、「こんな発想があったのか」と驚かされた直後に、人間のおかしさや切なさを感じさせられることもあります。
『ひきだしにテラリウム』の魅力とは?
最大の魅力は、わずかなページ数からひとつの世界を立ち上げてしまう発想力です。現実とは少しだけルールの違う社会や、不思議な生き物の存在する世界など、説明を詰め込みすぎることなく読者を物語の中へ引き込んでいきます。
奇抜な設定だけで終わらないところも重要です。どれほど変わった世界を描いていても、その中心にあるのは人間の欲望や寂しさ、優しさ、思い込みといった身近な感情。だからこそ、突飛な物語なのに妙なリアリティがあります。
さらに、短編ならではの「余白」も魅力です。すべてを説明して終わるのではなく、読み終わったあとに「この世界はこの先どうなるんだろう」「あの結末はどういう意味だったんだろう」と考えたくなる作品が多く収録されています。
ここからは、そんな『ひきだしにテラリウム』が好きな人におすすめしたい、独創的な世界観や短編ならではの余韻を楽しめる漫画を5作品紹介します。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『竜の学校は山の上』
『竜の学校は山の上』は、九井諒子先生による短編集です。ファンタジー的な存在が当たり前に暮らしている世界を舞台にしながら、そこで生きる人々の仕事や生活、価値観を細やかに描いています。
「もし現実社会にファンタジーの要素が本当に存在していたら?」という発想を、派手な冒険ではなく日常生活の側から掘り下げていくところが面白い作品。設定そのものだけでなく、その設定によって人々の暮らしがどう変わるのかまで考えられています。
同じ作者ということもあり、『ひきだしにテラリウム』のアイデアの豊かさや、少し変わった世界を淡々と描く雰囲気が好きだった人なら、まず読んでみてほしい一冊です。
2.『ショートショートショートさん』
『ショートショートショートさん』は、タカノンノ先生による短編漫画集です。日常から少しだけずれた出来事や奇妙な状況を題材に、短いページ数の中で次々と物語が展開されていきます。
何気ない出来事から始まったと思えば予想外の方向へ転がったり、不思議な設定が妙に日常へ馴染んでいたりと、「次は何が出てくるのだろう」という楽しさがあります。
一つの世界を長く追いかける漫画とは違い、短い物語を次々と味わえるタイプなので、『ひきだしにテラリウム』の短編集としてのテンポ感が気に入った人におすすめです。
3.『空想科学X』
『空想科学X』は、saxyun先生によるSFギャグ漫画です。科学や発明を題材にしながらも、理屈通りには進まないシュールな展開が次々と繰り広げられます。
普通なら壮大な物語になりそうなSF的アイデアを、あえて日常の延長線上で扱ってしまう独特の感覚が魅力。突拍子もない設定なのに、登場人物たちが妙に冷静なのも笑いにつながっています。
方向性はよりコメディ寄りですが、「一つのアイデアから思いもよらない世界を見せる」という部分は『ひきだしにテラリウム』にも通じます。シュールなSFが好きなら相性のいい作品です。
4.『ニッケルオデオン』
『ニッケルオデオン』は、道満晴明先生によるショートコミック集です。SF、恋愛、怪奇、ブラックユーモアなど幅広いジャンルの物語が収録されており、数ページという短さから想像以上に大きな余韻を残します。
かわいらしい雰囲気の物語だと思って読み進めていると突然ゾッとする結末が待っていたり、奇妙な世界の話が思いがけず切ない感情へつながったりと、物語の振れ幅もかなり大きめです。
短い物語の中に世界観とアイデアを凝縮するスタイルは、『ひきだしにテラリウム』が好きな人との相性も抜群。読後に少し考え込んでしまうような短編を求めている人におすすめです。
5.『天国大魔境』
『天国大魔境』は、石黒正数先生によるSF漫画です。文明が崩壊した世界を旅する二人と、外界から隔離された施設で暮らす子どもたちという二つの物語が並行して描かれていきます。
長編作品なので『ひきだしにテラリウム』とは構成が大きく異なりますが、何気なく提示された奇妙な設定から世界の仕組みを想像していく楽しさがあります。説明されていない部分を読者自身が考えながら読む感覚も魅力です。
日常的な会話のすぐ隣に異常な世界が存在している独特の空気や、SF設定の奥に人間らしい感情が見えてくるところも共通点。『ひきだしにテラリウム』をきっかけに、さらに大きなSF世界へ踏み込みたい人におすすめです。

まとめ
『ひきだしにテラリウム』が好きな人には、単にSFやファンタジーというだけでなく、「普通なら思いつかない設定をどう物語にするか」というアイデアそのものを楽しめる漫画がおすすめです。
同じ九井諒子先生の世界観をもっと味わいたいなら『竜の学校は山の上』、短編を次々と楽しみたいなら『ショートショートショートさん』や『ニッケルオデオン』が特に相性のいい作品です。
一方、シュールなSFを楽しみたいなら『空想科学X』、ひとつの謎めいた世界をじっくり探索したいなら『天国大魔境』もおすすめ。『ひきだしにテラリウム』のどの短編が好きだったかを思い出しながら、次の一冊を選んでみてください。

