自分は周囲とは違う。もっと特別な人間のはずだ――。
押見修造の『惡の華』は、思春期特有の自意識や欲望、恋愛、自己嫌悪を生々しく描いた青春漫画です。
文学を好む中学生・春日高男が犯したある行動を、クラスメイトの仲村佐和に目撃されたことから、彼の日常は少しずつ崩れていきます。
今回は『惡の華』が好きな人におすすめしたい、思春期・心の闇・歪んだ人間関係・生きづらさを描いた漫画を5作品紹介します。
『惡の華』の魅力とは?
『惡の華』の大きな魅力は、思春期の少年が抱える自意識や欲望を、きれいな青春物語として処理せずに描いているところです。
主人公の春日高男は、ボードレールの『悪の華』を愛読し、自分は周囲の同級生とは違う人間だと考えています。
そんな春日は、憧れているクラスメイト・佐伯奈々子の体操着を衝動的に持ち帰ってしまいます。
その行動を目撃していたのが、同じクラスの仲村佐和でした。
仲村は秘密を守る代わりに春日へある要求を突きつけ、そこから二人の奇妙な関係が始まっていきます。
春日が抱えている「自分は特別な人間でありたい」という思いと、実際の自分とのギャップ。そこへ仲村や佐伯との関係が絡み、物語は次第に危うい方向へ進んでいきます。
恋愛、欲望、自己嫌悪、孤独。誰かを好きになることさえ単純に美しいものとして描かれず、人間の格好悪い部分までさらけ出していくのが本作の特徴です。
読んでいて苦しくなる場面がありながらも目を離せない。その独特の心理描写こそが、『惡の華』の大きな魅力です。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『おやすみプンプン』
青春の美しさだけではなく、人間の弱さや心の闇まで描いた作品が好きなら『おやすみプンプン』がおすすめです。
少年・プンプンの成長を追いながら、家族、恋愛、将来への不安、孤独など、人生のさまざまな問題が描かれていきます。
物語の始まりには少年時代らしい純粋さがありますが、成長するにつれて人間関係は複雑になり、プンプン自身もさまざまな選択を重ねていきます。
特に恋愛が救いとしてだけ描かれず、執着や理想、自己嫌悪などと結びついていくところは『惡の華』にも通じます。
思春期から大人になるまでの苦しさや、人間の内面へ深く踏み込んだ漫画を読みたい人におすすめです。

2.『ヒミズ』
追い詰められていく少年の心理を描いた重い青春漫画なら、古谷実の『ヒミズ』がおすすめです。
主人公の住田祐一が望んでいるのは、特別な人生ではなく「普通」に生きること。
しかし家庭環境や周囲の人間との関係によって、そのささやかな願いは少しずつ崩れていきます。
自分自身への嫌悪や社会への苛立ちが積み重なり、少年の精神が追い詰められていく過程が強烈に描かれています。
『惡の華』の閉塞感や、若者が自分自身の感情を持て余して暴走していく危うさが好きな人には刺さりやすい作品です。
3.『ぼくらの』
少年少女の心の奥にある感情まで描いた作品を読みたいなら、鬼頭莫宏の『ぼくらの』がおすすめです。
夏休みに集まった少年少女たちは、ある人物から巨大ロボットを操るゲームへ参加しないかと誘われます。
ところが、それは単なるゲームではありませんでした。
極限状態に置かれた子どもたちを通して、それぞれの家庭環境や人間関係、恐怖、後悔などが描かれていきます。
設定は『惡の華』とは大きく異なりますが、若者を理想化せず、その内側にある弱さや醜さまで描く点には共通するものがあります。
心理描写の重い作品や、読後に簡単には消えない感情を残す漫画が好きな人におすすめです。
4.『血の轍』
『惡の華』で押見修造ならではの息苦しい心理描写に惹かれたなら、同じ作者の『血の轍』もおすすめです。
中学生の長部静一と、息子へ強い愛情を向ける母・静子。その親子関係を中心に物語が進んでいきます。
一見すると普通の家庭に見えますが、物語が進むにつれて母親の愛情が持つ異様さが少しずつ浮かび上がってきます。
大きな台詞や派手な出来事に頼らず、視線や表情、沈黙によって緊張感を作り出していく描写も印象的です。
『惡の華』の「人間の心そのものが怖い」と感じさせる部分が好きだった人には、特におすすめしたい作品です。
5.『青野くんに触りたいから死にたい』
純粋な恋愛が少しずつ危ういものへ変化していく漫画を読みたいなら『青野くんに触りたいから死にたい』がおすすめです。
高校生の優里は、付き合い始めたばかりの恋人・青野を事故で失ってしまいます。
しかし絶望する優里の前に、幽霊となった青野が現れます。
恋人ともう一度会えたという幸福だけでは物語は終わらず、二人の関係には次第に不穏なものが入り込んでいきます。
恋愛と執着の境界が曖昧になっていく感覚や、登場人物の心理へ深く踏み込んでいくところが特徴です。
『惡の華』の普通の恋愛漫画では味わえない危うさや、人間関係の息苦しさが好きな人におすすめです。
『惡の華』好きにおすすめの漫画まとめ
『惡の華』が好きな人には、爽やかな青春だけではなく、思春期の自意識や孤独、執着、人間の心の暗い部分まで描いた漫画がおすすめです。
- 青春と恋愛、人間の弱さを描いた作品なら『おやすみプンプン』
- 追い詰められていく少年の心理なら『ヒミズ』
- 少年少女の心の奥まで描く物語なら『ぼくらの』
- 押見修造の心理描写をさらに味わうなら『血の轍』
- 恋愛と執着が入り混じる物語なら『青野くんに触りたいから死にたい』
特に『おやすみプンプン』は、思春期の自意識や恋愛、人間の弱さを容赦なく描くという部分で、『惡の華』が好きな人におすすめしやすい作品です。
『惡の華』を読んで、もっと青春の苦さや人間の心の闇まで踏み込んだ漫画を読みたくなった人は、気になった作品から読んでみてください。

