『バクマン。』は、大場つぐみ原作、小畑健作画による、プロ漫画家を目指す少年たちの青春を描いた漫画です。主人公は、絵の才能を持つ中学生・真城最高と、物語を考えることが得意な同級生・高木秋人。二人がコンビを組み、「亜城木夢叶」のペンネームで漫画家への道を歩み始めます。
最高には、漫画家だった叔父・川口たろうの存在もあり、漫画の世界に対して複雑な思いがありました。しかし秋人から「俺と組んで漫画家になってくれ」と誘われたこと、そして声優を目指す亜豆美保との約束をきっかけに、本気で漫画家を目指すことになります。
漫画を描いて出版社へ持ち込み、編集者から評価され、連載を勝ち取り、読者アンケートで結果を出す。『バクマン。』は単に「漫画家になりたい」という夢だけでなく、プロとして漫画を描き続ける厳しさまでエンターテインメントとして描いた作品です。
『バクマン。』の魅力とは?
『バクマン。』の大きな魅力は、漫画が完成して読者へ届くまでの裏側を物語として楽しめることです。最高が作画、秋人が原作を担当し、それぞれの得意分野を生かしながら作品を作っていきます。しかし、面白い漫画を描けばそれだけで成功できるほどプロの世界は単純ではありません。
出版社への持ち込み、編集者との打ち合わせ、ネームの修正、連載会議、締め切り、単行本、読者アンケート、そして打ち切り。漫画を読む側からはなかなか見えない仕組みが次々と登場し、「週刊漫画が毎週掲載される」ということがどれほど大変なのかを感じられます。
特に面白いのが、漫画家と編集者の関係です。担当編集者は作品へ意見を出しますが、漫画を実際に作るのは漫画家です。編集者の意見をどこまで受け入れるのか、自分たちが描きたいものと読者が求めるものをどう両立するのか。創作と商業の間で悩む姿が何度も描かれます。
そして、『バクマン。』を熱い漫画にしているのがライバルたちです。中でも新妻エイジは、圧倒的な才能を持つ天才漫画家として最高と秋人の前に立ちはだかります。しかし単純な敵ではなく、互いの作品を認め合い、相手が面白い漫画を描けば自分も負けたくないと燃える理想的なライバル関係が築かれていきます。
福田真太、平丸一也、蒼樹紅など、同じ漫画雑誌で連載を目指す漫画家たちにもそれぞれ違った個性があります。競争相手でありながら、ときには相談したり協力したりする。漫画家同士の友情と競争が同時に存在しているところも魅力です。
また、最高と秋人が最初から順調に成功するわけではありません。思ったような評価を得られなかったり、作品が打ち切られたり、自分たちの得意ジャンルについて悩んだりします。失敗するたびに原因を分析し、「次はどうすれば勝てるのか」を考えて新しい漫画へ挑みます。
そのため、漫画制作を題材にしながらスポーツ漫画のような熱さがあります。アンケート順位は試合のスコアのように描かれ、連載会議は勝負の場になり、新妻エイジたちは強豪ライバルのような存在です。「漫画で勝つ」という目標が非常に分かりやすく、創作漫画に詳しくなくても物語へ入り込みやすくなっています。
原作漫画は2008年から2012年まで『週刊少年ジャンプ』で連載され、全20巻で完結。テレビアニメは第3シリーズまで制作され、2015年には佐藤健と神木隆之介の主演で実写映画化もされました。
ここからは、『バクマン。』のように、漫画やアニメなどの創作に人生を懸ける人々、才能を持つライバルとの競争、作品を世に送り出す仕事の裏側を楽しめる漫画を中心に、おすすめの5作品を紹介します。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『アオイホノオ』
島本和彦による、1980年代初頭の大阪を舞台にした創作青春コメディです。漫画家を目指す芸大生・焔モユルは、自分には誰にも負けない才能があると思いながらも、周囲の圧倒的な才能を目の当たりにするたびに激しく動揺します。
庵野ヒデアキをはじめ、後に漫画・アニメ・映像の世界で活躍することになる人物たちをモデルにしたキャラクターも登場。漫画家になるまでの試行錯誤だけでなく、当時の漫画やアニメ文化そのものを楽しめる作品です。
『バクマン。』で、才能のあるライバルを意識しながら「自分も絶対にプロになる」と奮闘する最高と秋人が好きだった人には特におすすめです。シリアスさよりコメディ色は強めですが、創作者の自信、嫉妬、焦り、情熱がこれでもかというほど詰まっています。

2.『これ描いて死ね』
とよ田みのるによる、漫画を描くことの楽しさを真正面から描いた青春漫画です。漫画が大好きな高校生・安海相は、ある出来事をきっかけに自分でも漫画を描き始め、仲間たちと漫画研究会で創作へ打ち込んでいきます。
漫画を読む側だった少女が、実際に描く側へ回ることで、コマ割りや物語作り、完成させることの難しさを知っていきます。それでも、自分の描いた漫画を誰かが読んでくれる喜びが次の作品を描く力になります。
『バクマン。』で、最高と秋人が初めて漫画を完成させ、編集者へ持ち込んだときのワクワク感が好きだった人におすすめです。プロの世界で勝つことよりも「なぜ漫画を描くのか」という原点へ強く焦点を当てており、創作そのものへの愛を感じられます。

3.『かくかくしかじか』
東村アキコによる、自身の漫画家人生をもとに描いた自伝的漫画です。漫画家を夢見る林明子と、彼女を厳しく指導する絵画教室の恩師・日高健三との関係を中心に物語が進みます。
漫画家になりたいと言いながら思うように努力できない若き日の作者と、容赦なく絵を描かせ続ける先生。進学、上京、就職、漫画家デビューと人生が進んでいくにつれ、二人の距離や関係も変化していきます。
『バクマン。』で、夢を口にするだけではなく実際に描き続けなければプロにはなれないという厳しさに惹かれた人におすすめです。創作者として成功するまでの華やかな部分だけでなく、その裏側にある後悔や支えてくれた人への思いまで描かれます。

4.『映像研には手を出すな!』
大童澄瞳による、女子高校生たちがアニメーション制作へ挑む漫画です。設定を考えることが大好きな浅草みどり、アニメーター志望の水崎ツバメ、そしてプロデューサー役を担う金森さやかが集まり、自分たちの「最強の世界」を映像にしようと奮闘します。
理想の映像を頭の中で想像するだけなら自由ですが、それを実際に完成させるには時間も予算も技術も必要です。作画、演出、音響、スケジュールなどさまざまな問題を乗り越えながら、一つの作品を完成へ近づけていきます。
『バクマン。』で、最高と秋人が役割を分担しながら一つの作品を作り上げていく過程が好きだった人には相性抜群です。創作への妄想と、それを現実にするための地道な作業。その両方を楽しめる作品です。
5.『重版出来!』
松田奈緒子による、漫画編集部を舞台にしたお仕事漫画です。柔道に打ち込んでいた黒沢心は、大手出版社へ入社し、漫画雑誌の編集部へ配属されます。新人編集者として漫画家と向き合い、一冊でも多くの漫画を読者へ届けるため奔走していきます。
漫画を作るのは漫画家だけではありません。担当編集者、営業、書店員、デザイナーなど多くの人が関わり、一冊の単行本が読者の手元へ届きます。本作では、漫画家側だけでは見えにくい出版業界の仕事が丁寧に描かれています。
『バクマン。』で服部たち編集者の仕事や、連載会議、単行本の売れ行きなど出版業界側の話が好きだった人には特におすすめです。『バクマン。』を漫画家側から描いた作品とするなら、『重版出来!』は編集者側から漫画の世界を覗ける作品として楽しめます。
まとめ
『バクマン。』は、真城最高と高木秋人が「亜城木夢叶」としてコンビを組み、週刊少年漫画誌の頂点を目指して漫画を描き続ける、大場つぐみ原作・小畑健作画の創作青春漫画です。漫画制作の裏側を描きながら、ライバルとの競争や友情、夢を仕事にする厳しさまで熱く描いています。
漫画家を目指す若者の情熱とライバル意識なら『アオイホノオ』、漫画を描くことそのものの喜びなら『これ描いて死ね』がおすすめです。漫画家になるまでの現実をさらに深く味わえる『かくかくしかじか』、チームで作品を完成させる楽しさなら『映像研には手を出すな!』、編集者側から出版業界を楽しむなら『重版出来!』も相性のいい作品です。
才能があるだけでも、努力するだけでも、必ずヒット作を生み出せるわけではありません。それでも自分たちが面白いと思う作品を作り、ライバルに負けないよう何度でも次の一本へ挑戦する。『バクマン。』を読んで最高と秋人の漫画家人生に夢中になった人なら、今回紹介した5作品にも「何かを作る人間」の熱さを感じられるはずです。

