『かくかくしかじか』は、漫画家・東村アキコ先生が自身の青春時代と、絵画教室の恩師・日高先生との思い出を描いた自伝的漫画です。漫画家を夢見る学生時代から現在へと続く人生を振り返りながら、厳しくも強烈な恩師との関係が描かれていきます。
笑えるエピソードがたくさん登場する一方で、読み進めるほど「もっとこうしていれば」という後悔や、大切な人との時間には限りがあるという事実が重く響いてきます。夢を追った経験がある人はもちろん、学生時代を振り返るようになった大人にも刺さる作品です。
『かくかくしかじか』の魅力とは?
最大の魅力は、漫画家になるまでの道のりを美しい成功物語だけにしていないところです。絵を描きながら迷い、逃げ、調子に乗り、ときには大切な人の期待を裏切ってしまう。そんな格好悪い部分まで描かれているからこそ、一人の人間が夢を追って成長していく姿に強いリアリティがあります。
そして物語の中心にいるのが、主人公に絵を教える日高先生です。とにかく厳しく、理不尽に感じることさえある人物ですが、主人公に「描け」と言い続けます。当時は理解できなかった言葉の意味が、時間が経ってから少しずつ変わって見えてくる構成が印象的です。
創作漫画として面白いだけでなく、「大切な人に伝えられなかったこと」を描いた作品でもあります。過去はやり直せないからこそ、何気なく過ごしていた時間の価値が後になって分かる。その切なさが、笑いの多い前半から物語が進むにつれて強く感じられるようになります。
ここからは、『かくかくしかじか』のように、絵や漫画などの創作に打ち込む青春、夢を追うことの苦しさ、人生に大きな影響を与える人との出会いを楽しめる漫画を5作品紹介します。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『ブルーピリオド』
成績もよく友人にも恵まれながら、どこか満たされない毎日を送っていた高校生・矢口八虎が、一枚の絵をきっかけに美術の世界へ飛び込んでいく青春漫画です。美大受験を目指し、才能や努力について悩みながら絵と向き合っていきます。
「好きだから頑張れる」だけでは済まない創作の厳しさが描かれているところが大きな魅力です。努力しても結果につながらないことがあり、周囲の才能に圧倒され、自分には何があるのか分からなくなる。その苦しさまで真正面から扱っています。
『かくかくしかじか』で、美術に打ち込む青春や「描き続けること」の難しさに惹かれた人には特におすすめです。絵を通して自分自身と向き合っていくという点でも共通しています。

2.『これ描いて死ね』
漫画を読むことが大好きな高校生が、ある出来事をきっかけに自分自身で漫画を描き始める青春漫画です。漫画研究会で仲間たちと作品を作りながら、「漫画を描くとはどういうことなのか」を知っていきます。
完成した作品を誰かに読んでもらう喜びだけでなく、自分の思い通りに描けない苦しさや他人の作品と比較してしまう気持ちなど、創作を経験した人なら思い当たる感情がたくさん登場します。
『かくかくしかじか』の漫画家になるまでの過程が好きだった人にはかなり相性のいい一作です。創作への情熱と、それを教えてくれる人や一緒に取り組む仲間との関係を楽しめます。

3.『海が走るエンドロール』
夫を亡くした65歳の女性・うみ子が、映像を学ぶ青年との出会いをきっかけに映画制作へ挑戦する物語です。映画を「観る側」だった彼女が、自分は映画を作りたいのだと気づき、年齢を超えて新しい世界へ踏み出していきます。
創作を始めるのに遅すぎることはないという希望を描きながら、好きなことを仕事や作品にする難しさもしっかり描かれています。周囲と比べて迷ったり、自分の才能について考えたりする姿もリアルです。
『かくかくしかじか』で、創作そのものだけでなく「自分は何をしたいのか」という人生の迷いに共感した人におすすめです。年齢は大きく異なりますが、何かを作ることで人生が動き始める感覚には共通するものがあります。

4.『映像研には手を出すな!』
アニメーションを作りたい女子高校生たちが、それぞれの得意分野を持ち寄って作品制作に挑んでいく漫画です。頭の中にある世界をどうすれば実際の映像として形にできるのか、試行錯誤を繰り返していきます。
創作の楽しさが非常に濃く描かれている一方、予算や時間、技術といった現実的な問題にもぶつかります。理想だけでは作品は完成しないという部分まで含めて、ものづくりの面白さを味わえる作品です。
『かくかくしかじか』で「とにかく描く」という創作への熱量が好きだった人におすすめです。作品を作る人たちが試行錯誤しながら前へ進んでいく姿をもっと読みたい人にはぴったりでしょう。
5.『左ききのエレン』
広告代理店で働くデザイナー・朝倉光一と、圧倒的な芸術の才能を持つ山岸エレンを中心に、才能を持つ者と持たない者、それでも何かを作ろうとする人々の葛藤を描いた作品です。
「努力すれば必ず天才になれる」という単純な物語ではありません。自分より才能のある人間を目の前にしたとき、それでも創作を続けられるのか。仕事としてものを作ることの厳しさも含めて描かれています。
『かくかくしかじか』で、才能へのコンプレックスや漫画家として生きていくまでの葛藤が印象に残った人におすすめです。創作する人間の格好良さだけでなく、嫉妬や挫折まで読みたい人ほど楽しめるでしょう。
まとめ
『かくかくしかじか』が好きな人には、絵や漫画などの創作を題材にしながら、夢を追うことの楽しさだけではなく、挫折や才能への迷い、人との出会いまで描いた漫画がおすすめです。
美術に向き合う青春なら『ブルーピリオド』、漫画を描く喜びなら『これ描いて死ね』、人生と創作をじっくり味わいたいなら『海が走るエンドロール』が特に相性のいい作品です。ものづくりの熱量を楽しむなら『映像研には手を出すな!』、才能と努力について深く考えたいなら『左ききのエレン』もおすすめです。
『かくかくしかじか』は、創作の物語であると同時に、人生の中で出会った大切な人との時間を振り返る物語でもあります。何かを作ること、夢を追うこと、そして「あのとき」の後悔が心に残った人は、ぜひ今回紹介した作品から次の一冊を選んでみてください。

