『平成転生』は、船津紳平による平成お仕事コメディ漫画です。主人公は2042年、憧れだった大手出版社「平談社」へ新入社員として入社した清水令和。しかし喜んだのも束の間、その年に会社そのものが倒産してしまいます。
絶望していた清水はトラックに轢かれて死亡。そこへ異世界転生の女神・イセが現れ、好きな世界へ転生させてくれることになります。普通なら剣と魔法の異世界を選びそうなところですが、清水が希望したのはなんと「平成」。自分が憧れた出版社が元気だった時代へ行き、そこで働く道を選びます。
ところが待っていたのは、清水が思い描いていた美しい過去とは少し違う世界でした。現代の感覚では驚いてしまうような働き方やハラスメント、独特すぎる出版社文化が次々と登場。未来人・清水のツッコミを通して、平成という時代を笑いながら振り返っていく作品です。
『平成転生』の魅力とは?
本作の面白さは、「異世界転生」のお約束を使いながら、転生先をファンタジー世界ではなく平成時代にしてしまったところです。清水にとって平成は、自分が生まれる前の憧れの時代。ところが実際に働いてみると、理想と現実にはかなりの差があります。
特に強烈なのが出版社での仕事です。清水は平談社のさまざまな編集部で研修することになり、現代ではなかなか想像できない業界文化を目撃します。本人は2042年の常識を持っているため、周囲が当然のように受け入れている出来事にも容赦なくツッコミを入れていきます。
ただし、『平成転生』は単純に「昔はひどかった」と平成を否定するだけの漫画ではありません。無茶苦茶な部分に驚かされる一方で、その時代だからこその熱気や人間関係、仕事への異様な情熱も描かれます。良いところも悪いところも含めて、平成の空気そのものをコメディにしているのが魅力です。
さらに清水には、単に平成観光を楽しむだけではない目的があります。2042年に平談社が倒産する未来を知っている彼は、平成での行動によってその未来を変えようとします。しかし自分なりに原因を取り除いたつもりで未来へ戻ってみても、会社の状況は改善するどころか悪化。そこで清水は、尊敬する先輩・金川の存在が未来を変える鍵なのではないかと考えます。
この「未来を知っている人間が過去を変えようとする」というタイムリープ的な面白さが加わることで、単発の平成あるあるだけでは終わりません。清水の行動が未来へどう影響するのかという一本の物語があり、先を読みたくなる仕掛けになっています。
そして題材が出版社なのも大きなポイントです。漫画編集部だけでなく、グラビアや少女漫画雑誌など清水がさまざまな部署を経験することで、平成の出版業界の濃すぎるエピソードが次々と登場します。社内をインラインスケートで移動する人物や、自動販売機の前で寝落ちする酔っ払い、格闘ゲームへすべてを捧げる人々など、強烈な業界人たちにも振り回されます。
2025年10月に「マガジンポケット」で始まった作品で、コミックスは全3巻。2026年7月発売の第3巻で完結しています。短めのシリーズなので、テンポのいいコメディを一気に読みたい人にも向いています。
ここからは、『平成転生』のように、過去の時代へ飛び込む面白さ、漫画・出版業界で働く人々、クリエイターたちの熱気、そして仕事の理不尽さまで笑いに変えてしまう作品を中心に5作品紹介します。
おすすめの作品を詳しく紹介
1.『平成少年ダン』
サンカクヘッドによる、令和を生きる青年が平成の少年時代へ転生する日常コメディです。玩具、漫画、お菓子、懐メロなど、平成を象徴するさまざまなものが登場し、懐かしい時代をもう一度体験していきます。
『平成転生』が出版社や仕事を通して平成を振り返る作品なのに対し、『平成少年ダン』は子ども時代の遊びや生活が中心。そのため同じ「令和側の人間が平成へ行く」という設定でも、違った角度から時代の空気を楽しめます。
『平成転生』で、現代とは違う価値観や文化を見て「こんな時代だったのか」と楽しめた人には特におすすめです。平成を知っている人なら懐かしく、知らない世代なら少し不思議な時代として読めるという点もよく似ています。
2.『アオイホノオ』
島本和彦による、自伝的要素を盛り込んだ創作青春コメディです。1980年代初頭の大阪を舞台に、漫画家を目指す芸大生・焔モユルが、自信と劣等感を爆発させながらプロの世界を目指していきます。
周囲には庵野ヒデアキをはじめ、後にアニメ・映像業界で活躍することになる若者たちが登場。焔は彼らの才能に衝撃を受けて落ち込みながらも、何とか自分のほうが上だと思い込もうとし、再び創作へ向かいます。
『平成転生』で、過去の出版・クリエイティブ業界の熱気や、今とは違う仕事の常識を面白く感じた人におすすめです。実際の漫画やアニメ文化を背景に、クリエイターたちの異常なまでの情熱を笑いとともに楽しめます。

3.『バクマン。』
大場つぐみ原作、小畑健作画による、プロ漫画家を目指す少年たちを描いた漫画です。絵を担当する真城最高と、物語を担当する高木秋人がコンビを組み、「亜城木夢叶」として週刊少年漫画誌での連載を目指します。
漫画を描くだけでなく、編集者との打ち合わせ、持ち込み、連載会議、アンケート順位、打ち切りなど、商業漫画の世界そのものが物語になります。漫画家と編集者がどのように作品を作り上げていくのかをエンターテインメントとして楽しめます。
『平成転生』で出版社内部の仕事や編集者たちの生態に興味を持った人には相性のいい作品です。コメディの方向性は違いますが、「漫画が世に出るまで、その裏側では何が起きているのか」という出版業界の面白さをさらに味わえます。

4.『映像研には手を出すな!』
大童澄瞳による、女子高校生たちがアニメーション制作へ挑む漫画です。設定を考えることが大好きな浅草みどり、アニメーターを目指す水崎ツバメ、そして予算や交渉を担当する金森さやかが映像研を結成します。
頭の中では何でも作れても、実際の制作には予算、時間、人手といった現実的な問題があります。理想を実現するために無茶をしながらも、三人は自分たちが本当に見たい映像を作ろうと奮闘します。
『平成転生』で、ちょっとおかしいくらい仕事や創作へ熱中する人々が好きだった人におすすめです。時代や舞台は異なりますが、「ものを作る人間ってどうしてここまでやるんだろう」と笑いながら、その情熱に引き込まれていきます。
5.『ニーチェ先生〜コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた〜』
松駒原作、ハシモト作画によるお仕事コメディです。コンビニでアルバイトをする松駒の前に現れた新人・仁井智慧は、理不尽な客に対しても媚びることなく、独特な理屈と冷静な態度で対応します。
接客業の理不尽さ、変わった客、クセの強い同僚など、「働いていると遭遇する妙な出来事」を笑いへ変えているのが特徴です。本人たちは真剣に仕事をしているだけなのに、その光景がどんどんシュールになっていきます。
『平成転生』で、仕事の常識に主人公がツッコミを入れ続けるところが好きだった人にはおすすめです。出版社とコンビニという違いはありますが、「なんでこれが普通になっているんだ?」という職場へのツッコミを楽しめるお仕事コメディとして共通する面白さがあります。

まとめ
『平成転生』は、2042年に憧れの出版社へ入社した直後に会社倒産と自身の死を経験した清水令和が、異世界転生の女神によって平成時代へ転生し、若き日の出版社で働く船津紳平の平成お仕事コメディです。
同じように令和から平成へ飛び込む物語なら『平成少年ダン』、過去の漫画・アニメ業界の熱気なら『アオイホノオ』が特におすすめです。出版社と漫画家の世界をもっと知りたいなら『バクマン。』、クリエイターたちの情熱なら『映像研には手を出すな!』、仕事の理不尽さを笑いたいなら『ニーチェ先生』も相性のいい作品です。
便利になったこともあれば、失われてしまったものもある。そして思い出として見る平成と、実際にその時代で働く平成はまったく違う。『平成転生』で清水と一緒に昔の仕事文化へツッコミを入れながら、その妙な熱気まで好きになった人なら、今回紹介した5作品にも笑えて熱い「時代」と「仕事」の物語が見つかるはずです。

